”私”は暗い空のもと、薄い黄色い地面の上に居た。
正確には”私たち”であるが。
ここはどこだ?
周りを見渡す。
すぐ目の前が崖?なのか地面が無い。
ちょっと先にはまた薄い黄色い大地が広がる。
いや、浮島か?
説明が難しい。
”アレックス”は後ろを向きながら腰を屈めて崖の先から橋のようなものを作りながら進んでいく。
危ない!と思うもそこから落ちることはなかった。
”私”はヒヤヒヤしながらその様子を眺めていた。
橋のようなものがだいぶ出来上がったので”アレックス”のもとに近づいた。
すると、空の向こうに紫のバーが出現し、そこには”エンダードラゴン”と書かれていた。
??
どうやら”エンダードラゴン”が現れたようだ。
”ようだ”というのはこの状況からの推察である。
ゲームの世界、倒すべき相手の名前、その下に紫のバー。
これはきっと最後の闘いが始まったこと、紫のバーは相手の体力であると推察した。
予想が的中したようで、”アレックス”は対岸に渡り切ると、「さぁー倒すわよ!」と言った。
”私”は剣を手に身構えた。
続けて”アレックス”は「あなたは”エンドクリスタル”を壊してきて」と言う。
また”何とかクリスタル”というアイテムの登場である。
”壊してきて”ということはどこかにその”何とかクリスタル”があり、それを破壊すればいいのだろう。
何のために?
まぁいい、とりあえずやってみることにした。
しかし、それがどこにあるかわからない。これだけは聞いておこう。
「”クリスタル”ってどこにあるの?」
すると”アレックス”はため息をつきながら教えてくれた。
「もう、あの塔の上よ」
その視線の先には黒っぽい塔がそびえていた。
あそこに登るのか・・・!?
そう言えば、ここに来る前に高いところに登る方法を教えてもらっていた。
そういう事か!
”私”はすぐに目の前の塔へ行き、ブロックを積み上げながら塔の上を目指した。
しばらく登ると塔の頂上までやってきた。
そこには怪しく光る”何か”があった。
これが”何とかクリスタル”のようだ。
”私”はこれを壊そうと手で殴ったが壊れる気配が無い。
何か道具を使えばいいのか?こういう時は・・・
ツルハシを手に持ち何度か叩いてみた。
すると”クリスタル”は壊れた!
やった、これで”エンダードラゴン”を倒せるぞ!
と思ったとき、そう言えば、”エンダードラゴン”ってどこにいるんだ?
ここまで来るのに必死だったせいか、ブロックを積み上げるために足元しか見ていなかった。
そこで、冷静に周りを見渡してみた。
塔の下の広くなっているところに”アレックス”が居て、そこに・・・居た!!
あれが”エンダードラゴン”か!
ちょうど”アレックス”が攻撃していた。
”エンダードラゴン”は赤く光り、遠くの空にある紫のバーが少し減った。
よしっ!いいぞ!!
その後、”エンダードラゴン”は空を飛び回る。
と同時に空中で何か光の線が”エンダードラゴン”にあたる。
よく見るとそれは”エンダードラゴン”が何かを吸収しているようだった。
!!
回復してる!!
なんと、”エンダードラゴン”は空を飛びながら体力を回復していた。
あっ!!
そして、その回復もとは先ほど壊した”クリスタル”だった。
周りをよく見ると先ほど登ってきた塔に似たものが円形状にいくつもあった。
そして、その塔の上にはそれぞれ”クリスタル”が置かれていた。
まずい!
1つ壊して満足していたが、他のも壊さないと回復されてしまう。
”私”は急いで次の塔へ行こうとしたが、ここで1つ困ったことが起こった。
ここから飛び降りないとならないのか?
飛び降りて大丈夫なのか??
しばらく考えた後、”アレックス”が言っていた「後で壊す」という言葉を思い出し、先ほどの積み上げたブロックを壊しながら降りていけるのではないかと思った。
そして、恐る恐る登ってきたブロックに乗り、一番上を壊してみた。
もちろん、目をつぶりながら。。。
すると、ガクンと一段下に降りた。
どうやら大丈夫そうだ。
慎重に1つずつ壊しながら降りて行った。
そして、地面に到達し、隣の塔へ移動しようとしたとき、後ろから衝撃を加えられた。
痛っ!
振り向くと、黒い手足の長い敵がいた。
目をつぶり剣を振り回すが当たらない。
思い出した。こいつは”エンダーマン”だ!
攻撃しようとするとワープする嫌な奴だった。
何度か攻撃を受けたが倒せないので強行突破することにした。
隣の塔まで走り、素早くブロックを積み上げて少し高いところに登ってみた。
すると、”エンダーマン”の攻撃を受けなくなった。
良かった。このまま上に登ろう。
2つ目の塔の頂上に差し掛かったとき、頭がつかえて上に登れない。
見上げてみると鉄格子があった。
これを壊さないと登れないらしい、ツルハシに持ち替え、鉄格子を壊し、頂上に登り、”クリスタル”を壊した。
”アレックス”の方を見ると果敢にも”エンダードラゴン”と闘っていた。
しかし、”エンダードラゴン”の体力はそれほど削れていない。
”私”は急いで残りの”クリスタル”を破壊して回った。
3つ目。
4つ目。
5つ目。
”エンダードラゴン”の体力回復量が目に見えて少なくなってきた。
相変わらず”アレックス”は真ん中で”エンダードラゴン”が来るのを待っている。
”私”は6つ目の”クリスタル”を壊そうと次の塔へ移動し登る。
”エンダードラゴン”の体力ゲージはかなり少なくなっている、もう少しだ。
そして、6つ目の塔に登り”クリスタル”を破壊していると地獄からの叫び声のようなものが聞こえた。
”アレックス”の方を見ると、”エンダードラゴン”から光が拡散していた。
もしかして・・・
倒したのか・・・?
そして、”エンダードラゴン”は空中ではじけて消滅した。
「やったわ!」
”アレックス”が言った。
「倒したの”!?凄い!!」
この時、”私”は純粋に凄い!と思いつつも、”私”は”エンダードラゴン”に一発も喰らわせていないが、良かったのか?という疑問が頭をよぎった。
が、倒したことに変わりは無い。やったー!!
”私”は塔を降り、”アレックス”のもとへ駆け寄った。
痛っ!
また後ろから衝撃が。
”エンダードラゴン”を倒しても”エンダーマン”は居なくならないのね・・・
剣を振り回しながら”アレックス”のもとに辿り着くと”アレックス”は何やらやっている。
「エンダードラゴンの卵ゲット!」
”アレックス”はそう言って嬉しそうだった。
「それ何?」と聞くと。
「ただの飾りよ」と返ってきた。
戦利品と言ったところだろうか?
そして、ふと思った。
ここからどうやって帰るんだ?
帰るとは言っても、先ほどまで居た地上へ帰るのか、本当の”私”の世界へ帰るのか、よくわからないが。
そう思っていたところ、”アレックス”は言った。
「さぁ戻るわよ」
そう言って、先ほどまで”エンダードラゴン”と闘っていた場所を見た。
するとそこにはここに来た時の”宇宙空間”のようなものが出現していた。
ここに飛び込めば帰れるのか?
でも、”アレックス”は”戻る”と言っていたな・・・
やっぱり元の世界には帰れないのかな・・・
そう思いながら、いつものように”アレックス”の後に続いて、その空間に飛び込んだ。
・
・
・
・
「ゴーン、ゴーン」
?
「新年明けましておめでとうございます」
??
「2022年元旦です」
???
手には”剣”ではなく”みかん”を握りしめている。
口を開け、よだれが垂れている・・・
背中が痛い、”エンダーマン”にやられたから・・・
ではなく、こたつに突っ伏してて背中が痛い。
????
あれ?確か、紅白を見ていたような・・・
あれ???
まふまふは?YOASOBIは??
もう年が明けちゃったの??
”私”はそのままテレビに映っている”ゆく年くる年”をぼんやり眺めながら頭の中を整理した。
”私”は確か、ゲームの世界に入り込み、”アレックス”と冒険をして、”エンダードラゴン”を倒して、”戻った”はずだった。
いや、紅白を見ていて、こたつでみかんを食べようとしてウトウトして・・・
あーーーー!!!
夢だったのか!!!!
凄いリアルな夢を見た。
そうだ!忘れないうちに体験したことをメモしておこう。
その後、”私”は正月返上でα版のゲームを開発し、ネット配信した。
そう、”私”はゲーマであり、天才プログラマーだったのだ。
出来上がったそのゲームは”CraftMine's”。
ブロックの世界でドラゴンを倒すというゲーム。
”私”が体験したゲームそのものである。
ちょっと変えたのはところどころにお助けキャラが出てくるのである。
もちろんそのキャラの名前は”アレックス”だ。
”CraftMine's”はこの後、数年をかけ、世界で一番売れたゲームになるとはこの時は知る由もなかった。
ただ、このゲームが面白いのは確実だった。
なんせ、”私”自身が体験したのだから。
そうそう、”神の声”も実装しておいた。
「イージーモードですが何か?」
ー完ー