”私”は今日も洞穴で目が覚めた。
昨日はゾンビに襲われ散々だったが、頭の中に聞こえた「ネザーへ行け」という言葉が気になる。
気になるが、それが何なのかを知ることができない。。。
”ネザー”へ行ったらドラゴンが居るのか?
もどかしい・・・
どうすることも出来ず、この先どうしたらいいか途方に暮れていた。
黙っていても仕方が無いが、何をすれば良いかもわからない。。。
正常に思考ができない状態になり、無意味に高台に登ってみた。
もしかしたら”ネザー”が見えるかも知れないと思い。
でも、”ネザー”ってどんなところかわからない。
見えたところでそれがそうだと理解できるのか・・・
高台でぐるっと周りを見渡した。
遠くに高い山、反対側には海のような大きな水辺が見える。
が、それらが”ネザー”では無いなら、それ以外のそれらしきものは見当たらない。
どうすることも出来ずに、そのままボーっとしていると、遠くにかすかに動くものが。
また何かの動物か?
その何かは徐々に近づいてくる。
動きは人間のようだ。
また、同じ顔のおじさんか?
どんどん近づいてきたその”人”は明らかに同じ顔のおじさんたちとは違った。
さらに近づいてきてわかった。
それは”女の人”だった。
ただ、その”女の人”が変わっていたのは頭の上に”Alex”という文字が浮かんでいる。
??
何だ?この人の名前か?
そう思った瞬間、頭の中に文字が流れてきた。
「やぁスティーブ、一緒にマルチをやろうって言ったのにどこ行ってたの?」
一瞬では理解できない。
「やぁスティーブ」?
このフレーズからは”私”の名前がスティーブと言うことになる。
それから、
「一緒にマルチをやろう」??
オンラインゲームではよく聞くフレーズだが、リアル世界に対しての言葉ではない・・・
”Alex”はそのまま話を続けた。
実際には頭の中に続けて文字が流れてきた。
「装備は揃った?そろそろネザーを攻略しない?」
”ネザー”!?
昨日聞いた言葉だ。
”Alex”は”私”を見て不思議そうにしている。
黙っている事が不思議だったのだろうか?
でも、声は出ないし、どうしたらいいんだ?
話しかけたい言葉を頭の中で思い描いた。
「君はアレックスって言うの?」
すると、”Alex”からまた頭の中に文字が流れ込んできた。
「何、寝ぼけてるの?最近ゲームタグは変えていないわよ」
??
聞こえたのか?
”寝ぼけている”?
”ゲームタグは変えていない”??
どうやら向こうは”私”を知っていて、”私”も向こうを知っている前提のようだ。
そう考えながら”アレックス”という部分にはツッコミが入らなかったところを見ると、読み方はあっていたようだ。
なんせ、”私”は英語が大の苦手だからである。
ちなみに、”Alex”とは名前と思っていたのはゲームタグということらしい。。。
”マルチ”に”ゲームタグ”・・・
どうやら”私”はオンラインゲームの世界に迷い込んだようだ。
しかし、ゲーマーの”私”でもこんなゲームは知らない。
どこにもヒントも何も無い、普通は村人が情報を教えてくれる。
それにこの”ゲーム”、物を作るだけなのか?
黙っている”私”にアレックスは再び話しかけてきた。
「装備は揃ったの?」
”私”は答えた。
「いや、まだだよ」
「そう、じゃーとりあえず鉄を取りに行きましょう」
アレックスはそう言って山の方に歩いて行った。
”私”は訳もわからずついて行った。
アレックスは山のふもとに空いた穴に進んでいった。
慣れた様子で壁にたいまつを置きながら、中を明るくして進んでいく。
しばらくして、アレックスは言った。
「鉄、あったわよ」
その視線の先には石の中に少し茶色がかった何かが埋まっている部分があった。
どうやら、これが鉄のようだ。
アレックスは鉄を掘り始めた。
すると、石炭の時のように塊になって宙に浮いた。
アレックスはこれをポケットに入れてさらに掘っている。
要するに、これを集めて装備を作るということのようだ。
多少は理解したが、”私”はまだ黙ってついて歩くだけだった。
何回か進んでは堀りを繰り返し、アレックスは言った。
「これだけあればとりあえず十分ね」
どうやら必要な数が揃ったらしい。
相変わらず、”私”は何もしていない。
アレックスは元来た道を戻り始めた。
置いて行かれたく無かった”私”はアレックスについて行った。
洞窟から出ると、アレックスはかまどはどこか?と聞いてくるので、我が家へ案内した。
我が家の前に着くなり、アレックスは言った。
「まだ洞穴に住んでるの?ま、エンドラ倒すだけだからこれでもいいか」
??
”エンドラ倒す”??
あ!
”私”は悟った。
倒す相手である”エンドラ”とはあの竜みたないドラゴンみたいなやつの事だな。
ということは”エンドラ”の”ドラ”はドラゴンのことか?
すると、”エン”は・・・・
”遠藤”!?
”遠藤ドラゴン”??
うぉ!誰だそれ??
自分で考えながら吹き出してしまった。。。
考えてもわからないので、アレックスにそれとなしに聞いてみることにした。
ちなみに、アレックスはかまどで鉄を焼いている。焼くと何かいいことがあるのか?
そう思いながらも聞いてみた。
「”エンドラ”って強いよね~、さすが”エンドウドラゴン”だね!」
ボケに対するツッコミを待った・・・
・・・
・・・
しかし、無視された!
と思ったら、アレックスが答えてくれた。
「”エンドウドラゴン”じゃなくて、”エンダードラゴン”でしょ、活舌悪いな~」
普通に訂正された・・・
しかし、”エンドラ”とは”エンダードラゴン”だということがわかった。
わかったけど、それ以上の情報は得られなかった。
正直に知らないことを話した方が良かったか?
そう考えていると、鉄が焼けたようで、鉄の延べ棒を手に、作業する台に向かっていた。
すると瞬く間に兜・鎧・ズボン(?)・靴を作って”私”に渡してくれた。
もう先ほどの話を再びする雰囲気ではなかった。
仕方が無いので、頂いたものを身に着けてみた。
動きづらい・・・
重さは感じないが動きづらい・・・
こんなので戦えるのか?
とりあえず慣れるしかないのか?
アレックスはさらに鉄の剣と大きな板まで渡してくれた。
剣はわかるけど、この板は・・・?
板を目の前に戸惑っているとアレックスが「左手に持つのよ」と言った。
言われるがまま、左手に持ってみた・・・
どうやらこれは”盾”のようだった。
これで本当に装備一式が揃った。
アレックスは休む間もなく、「次は黒曜石が必要ね」といった。
黒曜石??
もうわからないことばかりでいちいち聞くのはやめて、アレックスについて回ることにした。
このまま行けば簡単に”エンドラ”を倒せるかな?
当然、そう簡単には行かないが、この時はちょっと期待してしまっていた。