ある日、”私”は気づくと広い草原に居た。
どうやってここに来たのか覚えていない。
だが、どういうわけか目の前には草原が広がっている。
手には何も書かれていない紙切れと近くにはたいまつと宝箱?のようなものを置いてある。
辺りに人は居ない。
空を見上げると太陽がまぶしい。
どうしたら良いかわからず戸惑っているが、誰かいないかと思い、声を出そうと思ったが声が出ない。
困った・・・
ちなみにというか当然だが、ここがどこだかわからない。
違う世界にでも来たような感覚だ。
未だにどうすれば良いかわからないが、とりあえず宝箱を開けさせてもらった。
誰のものかわからないが中には木(原木?)や木製の斧などが入っていた。
それからリンゴとパンが入っていた。
辺りを見渡すが本当に誰もいない。
持ち物に食料が無いので貰っておいた方が良いかしばらく悩んだ。
悩んだ末、貰うことにした。
ちょっとドキドキした。
食料を頂き、ポケットに入れて気づいたが、持ち物が増えた感覚が無い。
いくらでも持てそうだった。
試しに斧や木(原木?)を持ってみる。
重さを感じない。
調子に乗って、木製のツルハシも持ってみた。
全然重くない。
”ハッ”と思い、辺りを見回す。
誰にも怒られない。
というか、やはり誰もいない。
誰も居ないのをいいことに、宝箱(?)にあるものを全部持ってみた。
なんかまだ持てそうだったので、宝箱(?)の周りにあった”たいまつ”も頂くことにした。
なぜかポケットの中にたいまつが入るし、燃え移らない。
ていうか、熱くない。
なんだか不思議な世界に来てしまったようだ。
この状況を少しずつだが理解してきた。
すると急に怖くなってきた。
なんで誰も居ないんだ?
ここはどこだ?
叫ぼうにもやはり声が出ない・・・
仕方が無いので少し周りを見てみることにした。
少し高いところに登って周りを見渡したところ、遠くに家みたいなものが見える。
人がいるかも!
急いでそっちへ行ってみる。
が、この世界は段差がやけに高い。
一段1メートルくらいはあるだろうか。
しかし、この世界では軽々に超えられる。
重力が少ないのか?
とりあえず、その家らしきところに行ってみると・・・
家が複数ある。
人も居た!
ということはここは村か?
安堵と同時に恐怖を覚えた。
皆同じ顔でおじさんばかり。
どこかの一族か?
私の方を見ても襲ってくるなどの気配が無い。
というか、私に気づいていない?
とりあえず話しかけようと近寄るが、その”人”は「はぁ?」というばかりで話にならない。
というか、自分は一言も発せられない。
その”人”たちは何か忙しそうにうろちょろ歩き回っている。
中には農業をしている人もいた。
どうしようと思っていたところ、その”人”たちは急に家に帰っていった。
家の中を覗いてみると皆、ベッドで寝ている。
空を見上げると夕方だった。
この”人”たち、寝るの早いな~と思いつつも、自分の寝床をどうしようか考えた。
たまたま近くの家をのぞいたら寝ている人が居なかった。
空き家かな?
一晩ここを貸してもらおう。
そうこうしているうちにだいぶ暗くなってきた。
今日はなんだか疲れたな・・・
ベッドに横になり少したったかと思うともう朝だった!
寝た気はしないが、疲れは取れている。
今日はどうしよう・・・
というか、相変わらずここはどこだ?元の世界に帰りたい・・・
そう思ってもどうにもならない。
泣きたくても涙も出ない・・・
しばらくその”人”たちを観察していると農業をしている人に目が留まった。
素手で作物を刈り取り、また種を植えている。
見よう見まねでやってみると、じゃがいもとにんじんが収穫できた。
その時、
勢いあまって畑の地面を壊してしまった。素手で・・・
掘ったのではなく、壊してしまったという表現が正しいと思う。
壊した地面は1メートル四方の立方体として目の前に浮いている。
なんだこれは?
理解できずに頭の中で”?”がたくさん浮かんでくる。
意識せずに一歩前へ出たときにその土の立方体が自分のポケットの中に入っていた。
!!
これは貰うことができるのか!?
しかも、相変わらず重さを感じない。
そういえば、頭の片隅に何かの記憶がよみがえる。
ただそれが何かがわからない。
土を壊したら立方体に・・・
そういえば、最初の宝箱に木(原木?)が入っていたことを思い出した。
そして、頭の片隅にある記憶から、その原木を手に持ち、手を動かすと原木が木材に変わった。
さらに、記憶の奥底を頼りに木材を持ち、手を動かすと・・・
作業するための台のようなものが出来上がった。
で、これをどうすれば良いかわからずに、とりあえず邪魔だったので地面に置いておいた。
う~ん、今日はどうしよう・・・
先ほど置いた台に手を置いたそのとき!
あらゆるものが頭の中に浮かんできた。
木の階段や木のドア、石の剣や鉄の兜まで。
その”もの”と一緒に、必要な材料までもが頭に浮かんだ。
そうか、材料を揃えればいろいろなものが作れるんだ。
私はそう理解した。
すると頭の中にある記憶とは異なる何かが一気に流れ込んできた。
広大な海、熱くて暗い世界、角ばった竜?ドラゴン??
私はすべてを悟った。
頭の中に流れ込んだあのドラゴンを倒せば元の世界に戻れるんだ!と。
”私”はこの後さまざまな苦労をすることになるとはこの時は思いもしなかった。
そうそう、食料を手にしたけどいまだにおなかが空かないんだよね・・・
”私”は食べることが生きる楽しみの1つなのに、おなかが空かないと食べることができないんだ。。。
その時頭の中にある言葉が聞こえてきた。
「イージーモードですが、何か?」
なんだろう?これに反応してはいけない気がした・・・